平成29年1月より、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の利用できる対象者が、20歳以上60歳未満のほぼ全員に拡大され、金融機関の窓口営業などもあり、最近では毎月3~4万人ずつ増え続け、平成30年6月現在では、加入者総数は約94万人を超えているそうです。
士業の先生の集まりなどでもよく話題にのぼりますし、銀行の外交の方に加入を勧められたり、窓口でパンフレットを渡されたりするほか、iDeCoに加入した方がいいの?という相談も今春ぐらいから増えてきております。
そこで今回は、iDeCo(イデコ)の仕組みと落とし穴を中心に解説します。
iDeCo(イデコ)とは?
正式名は『個人型確定拠出年金』といいますが、簡単に言うと「老後資金を自分で積み立てておくためのお得な制度」といったところです。
具体的には、60歳までの期間に、毎月一定の掛金を金融機関に支払い、その掛金で投資信託や定期預金のほか保険などの金融商品を選んで運用して、60歳以降に運用した資産を受け取るというものです。
年金という名前はついてはいますが、「自分自身が支払った金額」と「その運用で得た金額」の合計額の範囲内での受け取りであり、内容は自分でその運用を選択することができる「積立」制度です。
iDeCo(イデコ)のメリット!何がお得なの?
お得な理由は、少々難しい言葉になりますが、以下の3つが挙げられます。
【その1】 月々支払う掛金が全額所得控除
月々の掛金の全額が所得控除となり、所得税や住民税の納税がある人にとっては、大きな節税効果があります。
注意点(所得ない人)
学生や専業主婦などの税金を納めていない方は、控除する所得自体がないので節税効果はありません。
ちなみに、専業主婦分の掛金を夫の収入の中から払っても、扶養される妻の掛金は必ず本人名義の口座より引落しとなるため、扶養している夫の所得税の控除対象になりません。
注意点(所得はあっても税額がない人)
個人事業主や会社員の方であっても、すでに「住宅ローン控除などで節税の恩恵を受けている方」や「これから受けようとする方」は、この住宅ローン控除によって税金が全額還付となっているなども、この節税の恩恵を受けられないこともありますので、ご注意下さい。
【その2】 金融商品の運用益が非課税
iDeCoでは、運用期間中に得られた金融商品の分配金や利息のほか売却益に税金がかかりません。
NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)と同じメリットとなります。
通常は「投資信託で得られた分配金・売却益」や「定期預金などの利息」には『20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)の税金』がかかりその分手取り額が減りますが、iDeCoで運用した場合には、税金はかかりませんので、その分運用が有利となり将来受け取る金額が増えることになります。
【その3】 受け取るときの節税効果
運用した資産は、60~70歳までの間に「一時金」「年金」「一時金と年金の両方」の3つのいずれかの形式で受け取ることになりますが、その受け取り方法によって、それぞれ税金の優遇があります。
一時金として受け取る場合の4つの節税効果
受取金が退職金(退職所得)とされたり、相続税の非課税制度の対象となります。
1.掛金を支払った期間(加入年数)に応じた退職所得控除があり、その金額までは非課税となります。
- 20年以下の場合:退職所得控除額=40万円×加入年数
- 20年を超える場合:退職所得控除額=800万円+70万円×(加入年数-20年)
- 加入期間10年→40万円×10年=400万円
- 加入期間20年→40万円×20年=800万円
- 加入期間30年→800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円
計算式は少々難しいですが「20年までは毎年40万円」「21年目以降は毎年70万円」増えていくということです。
2.退職所得控除後の退職所得が1/2
仮に受取金が上記の退職所得控除の金額を超えた場合にも、 その超えた金額の1/2の部分のみが課税の対象となります。
3.所得税で他の所得と合算せずに税率が適用される分離課税
所得税は、所得の金額に応じて5%から45%までが課されますが、一時金の受取りとは他に給与所得などがあったとしても、他の所得と合計せずに、その退職所得の金額のみの税率を計算する分離課税という有利な方式により税金計算しますので、適用される税率が低くなります。
4.加入者が死亡して遺族が受け取る場合の相続税の非課税制度
遺族が死亡一時金を受け取る場合には、税法上「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。
ただし、死亡日から3年以内に死亡一時金を受け取るときは「法定相続人1人当たり500万円」までの金額は、相続税が非課税となります。
なお、死亡日から3年~5年の期間内に受け取るときは受取人の一時所得として課税されます。
年金として受け取る場合の節税効果
年金として受け取る場合には、公的年金として扱われ、一定の算式により計算した「公的年金等控除」を控除して税金計算します。
ただし、他に公的年金を受け取っている場合には、合算して計算することになります。
落とし穴(一時金として受け取る場合)
退職金がそもそもない「個人事業主の方」は関係ありませんが、退職金を受け取る予定の「会社員や会社経営者の方」には、一時金の受け取るときに大きな落とし穴があります。
「一時金」と「会社からの退職金」を同じ年に受け取ると最悪な結果に!
「一時金」と「会社からの退職金」を同時に受け取る場合には、それぞれで「退職所得控除額」を計算するのではなく、双方を合計した受取額から、「双方の勤続年数(重複期間分は除く)を元に計算した退職所得控除額」を差し引くことにより課税所得をまとめて算出することになります。
これにより、一時金分の退職所得控除が実質的に無くなることになり、節税効果が大幅になくなります。
さらに、その年に集中して退職所得が生じることになるので、所得税の累進課税により高い税率(最高45%)で課税されてしまうことになり、過去の節税額をふいにしてしまうという最悪の結果となりますので注意が必要です!
「一時金」を受取った年から4年以内に「会社からの退職金」の支給を受けたら
このような場合にも、退職所得控除額を減額する調整計算をしなければならないため、期待した節税効果が得られないケースもありますので、注意が必要です。
節税の恩恵を100%受けるためには、「会社からの退職金」を受け取る5年前までに「一時金」を受け取っておくなどが必要です。
実際、税理士である自分でも過去に、似たような制度である「小規模企業共済」で、過去の共済金の受取りをチェックせずに多額の退職金を支給しようとしたというヒヤッとした経験があります。
節税効果のまとめ
チラシなどの広告に『節税になる!』と大々的に書かれているiDeCo(イデコ)ですが、上記の通り、どんな場合でも、どんな方でも節税になるというわけではありません。
「払っている期間の節税効果」と「受け取るときの節税効果」の両方の恩恵をきちんと受けられないと、節税になったとは決して言えません。
例えば、払った期間トータルで100万円の税金が節税になったとしても、それを受け取るときに100万円の税金を支払うことになったらトータルの税金は0万円(100万円-100万円)となり、あくまでも税金の支払いを後送りにしたに過ぎないのです。
(これは「節税」とは言いません。専門用語で「課税の繰延べ」といいます)
iDeCo(イデコ)という制度の内容
加入できる人(加入資格)
日本に住んでいる20歳以上60歳未満の方は、誰でも加入することが出来ます。
ただし、国民年金の支払い義務がある方のうち、保険料を納めていない方(年金未納者)や保険料の一部や全部の免除を受けている方(年金免除者)は、加入できません。
加入した後の解約や中断
一度加入したら60歳になるまでは、途中解約はできません。
解約ではなく掛金の支払いを中断することは可能ですが、中断している期間であっても毎月の口座管理料(64円~642円)は掛金の中から差し引かれることになりますので、加入前に十分な検討が必要です。
月々の掛金は?平均額は?
掛金は、最低月額5,000円(年間6万円)からとなっており、上限は職業などによって異なります。
その範囲内で、月額1,000円単位で選択でき、年に1回に限り金額の変更ができます。
掛金の上限は?
掛金の上限は下記の通りです。
自営業者・学生 → 月額68,000円(年額816,000円)
会社員 → 月額23,000円(年額276,000円) ※企業年金などがない場合
公務員 → 月額12,000円(年額240,000円)
専業主婦(夫) → 月額23,000円(年額276,000円)
掛金の平均額は?
運営管理機関連絡協議会が作成した確定拠出年金の統計資料によると、加入者の平均額は年間約15万円と記載されています。
月額にすると12,500円で、上限いっぱいの金額ではなく「とりあえず1万円から始めてみよう」と考えている人が多いようです。
掛金の受取は?
運用した資産は、60~70歳までの間に「一時金」「年金」「一時金と年金の両方」の3つのいずれかの形式で受け取ることになります。
年金で受け取る場合の受取期間は、5年~20年としているところが多いですが、金融機関によっては期間が異なります。
また、「加入者が障害者となったとき」や「死亡したときに」も受け取ることができます。
金融機関を選ぶ
iDeCo(イデコ)を始めると決めたら必ず「運営管理機関」という、取扱い金融機関を決めなければなりません。
iDeCo公式サイトで数えてみましたら、平成30年8月30日現在では160の運営管理機関が登録されていました。(受付業務のみを行う金融機関を含む)
それぞれ「管理手数料」「運用商品の種類」「サポート(窓口やコールセンターなど)」「WEBの使いやすさ」「スマホアプリの有無」などにより大きく異なります。
最初に申込した金融機関をあとで変更することは可能ですが、運用資産を一旦売却することになったり、移管手数料がかかることがあったりと、何かとコストと時間がかかります。
したがって、金融機関の選択はとても大切なので十分な検討が必要となります。
iDeCo比較おすすめサイト
下記のウェブサイトがわかり易くとても便利です。
(リンク先:iDeCoナビ様のサイト)
https://www.dcnenkin.jp/search/
運営管理機関の業態内訳(執筆日現在)
業 態 | 運営管理機関の数 |
---|---|
都市銀行 | 4 |
地方銀行 | 50 |
信託銀行・信用金庫など | 83 |
証券会社 | 8 |
生命保険会社・損害保険会社 | 9 |
投資信託会社など | 6 |
iDeCo(イデコ)制度のまとめ
加入できる人 | 日本に住んでいる20歳以上60歳未満の方 (国民年金の未納者・免除者を除く) |
月々の掛金(下限) | 5,000円(1,000円刻み) |
月々の掛金(上限) | 68,000円(自営業者) 23,000円(会社員や専業主婦) 12,000円(公務員など) |
月々の掛金の変更 | 可能(年に1回のみ) |
掛金の支払中断 | 中断可能(ただし口座管理手数料はかかる) |
掛金の支払い | 60歳まで(近いうちに延長される見込み) |
途中解約 | 不可能 (原則60歳まで解約できない) |
受給開始 | 60歳~70歳 |
手数料 | 初期費用(2,777円) 毎月口座管理料(64円~642円) |
金融機関の変更 | 可能 (ただし一旦売却などの手続きや時間がかかる) |
運用方法 | 投資する商品を自分で選択 |
運用リターン | 運用次第 |
元本割れリスク | あり (運用商品による) |
iDeCo+(イデコプラス)
平成30年5月より、「従業員が100人以下の中小企業に使用される従業員」で「iDeCoに加入している方」については、従業員の加入者掛金に対して、会社が掛金を上乗せ(追加)して拠出することが可能になる『iDeCo+(イデコプラス:中小事業主掛金納付制度)』が始まっています。
この記事は、執筆日現在の法令などに基づくものであり、その後の法改正によるアップデートは原則としてしておりません。
最後にもう一つ隠れている落とし穴?!
この記事を執筆しているときに、税理士試験の法人税試験を受験した10年以上前に目にしただけのとてもマイナーな「退職年金等積立金に対する法人税(特別法人税)」というものを久々にふと思い出しました。
受験のときも今でも法律自体は存在していますが、その時も現在も課税は停止中です。
この課税停止措置はさらに平成29年から3年間延長され、平成32年(2020年)3月末までは適用されないこととなっているので、iDeCoに対し課税されたことは今まではありません。
改めて調べてみると、iDeCo(個人型確定拠出年金)も課税対象の範囲内で、年金の積立金(年金資産)に対して年1.173%(国税1%+地方税0.173%)が課せられる税金で、積立している年金資産から金融機関が天引きして納税するという先行きチョット不安になる制度でした。
業界団体からも完全廃止・撤廃の要望が毎回されてはいますが廃止されていない現状では、いつ何時この特別法人税の課税停止が解除されて復活する可能性も頭の片隅においておく必要があると認識した次第です!
もし、今後iDeCoの加入者が数百万人になり年金資産が膨らんだ後に、国が税収目的で課税停止を解除して適用が復活したら、加入者は全員、少なくとも年間で1.173%以上の利回り運用しないと、確実に元本割れとなってしまいますね。(怖)
投稿者プロフィール

- 盛永崇也(東京の神田で開業している税理士/行政書士事務所の代表)
「税務相談/税務顧問や経理経営支援/法人申告・確定申告・給付金申請・相続手続の代行/法人設立や廃業支援や代行」など、法人個人を問わず、お金にまつわる様々なサポートをさせて頂いております。