新学期が始まり、新たに私立高校や大学のほか私立中学校に入学した子供さんがいるご両親は、色々と出費がかさむこの時期。
私立高校の授業料が「実質無償化」や「一部無償化」などのニュースを一度は、目にしたことがあるかと思います。
今回は、このような育ち盛りのお子様をお持ちの方に、「私立高校の授業料が無償化(負担軽減)」制度について、難しい内容ですがザックリと解説します。
ちなみにですが、公立高校では年収約910万円未満の世帯については、完全に無償(=無料)となっております。
特に下記のような方は、最後までお読み頂く事をオススメします。
- ご親族などに、今住んでいる県外の高校に通わせようとお考えの子供さんがいる方
- 高校に通うお子様がいる会社の経営者の方で、今年の役員報酬を見直しを検討している方
私立高校の授業料が無償化(負担軽減)制度
下記の2つが本制度になり、2階建て方式になっています。
- 国が授業料への補助を行う「高等学校等就学支援金」
- 都道府県が学費負担を軽減する「授業料軽減補助金」(名称はそれぞれ異なります)
国が行う「高等学校等就学支援金」
支給対象
世帯全員の収入に課税される「住民税(市町村民税)の所得割額」が304,200円未満の世帯
所得割額が304,200円未満とは?
- 「住民税(市町村民税)の所得割額」は、お勤めの方は会社から毎年5月頃もらう「住民税特別徴収税額通知書」、個人事業者の方やお勤めの方で確定申告をした方は、お住まいの市区町村から届く「住民税納税通知書(納付書)」にて確認して下さい。
下記に(例)を載せました。 - 4月~6月分は、前年の住民税額により判定し、7月~翌年3月分は、その年の住民税額により判定します。
- 両親のうちどちらか一方が働き、高校生1人(16歳以上)と中学生1人の子供がいる世帯を前提にすると「給与の年収が約910万円未満」がおおよそ「所得割額が304,200円未満」になります
「住民税特別徴収税額通知書(例)」総務省HPより
「住民税納税通知書・納付書(例)」東京都千代田区役所HPより
支給される金額
世帯の収入(正確には所得)により「支給」又は「学校に納付する授業料が減額」されます。
都道府県が行う「授業料軽減補助金(名称はそれぞれ異なります)」
支給対象
収入要件
国が行う「高等学校等就学支援金」と同一
→ 世帯全員の収入に課税される「住民税(市町村民税)の所得割額」が304,200円未満の世帯
学校所在地の要件
【重要な落とし穴】お住まいの都道府県によって異なります。
- 東京都の場合 → 「都内に在住」の場合には、「他の県に学校があっても」対象となります。
- 埼玉県・神奈川県の場合 →「県内に在住」かつ「県内の学校」に通われる場合のみ
よって、例えば「神奈川県在住」で、「東京都などにある学校に通学した場合」には、都道府県が行う「授業料軽減補助金」は補助の対象にはなりません。
東京都は例外で「東京都在住」で「神奈川県や埼玉県の学校に通学した場合」でも補助の対象です。
結果として、東京都以外のお住まいの方が、他の都道府県の学校に通う場合には、最大で年間約35万円(3年間で約105万円)という大きな金額の助成が受けられなくなり、負担が増大することにより、授業料の実質無償化にはほど遠い結果となってしまいます。
東京都の在住者の場合(東京都私学財団HPより引用)
埼玉県の在住者の場合(埼玉県HPより引用)
神奈川県の在住者の場合(神奈川県HPより引用)
所得割額が304,200円未満とは?
国が行う「高等学校等就学支援金」と同じ
支給される金額
世帯の収入(正確には所得)により「支給」又は「学校に納付する授業料が減額」されます。
金額は各都道府県が個別に定められていますので、「お住まいの都道府県のHP」や「お子様が学校からもらってくる冊子など」を参照して下さい。
※都道府県によっては、このほかに施設設備費や入学金等の補助があります。(ただし所得要件あり)
参考までに東京都私学財団HPの年収目安と軽減額表を載せておきますが、東京都以外の道府県の場合には、所得に応じて段階的に補助が減額される階段方式が多くなっています。
働き損になる場合があります(東京都の場合)
この様な補助金や助成金は、その収入によって段階的に減額されます。
しかし、東京都に在住の方は、この高校授業料の補助(助成)は「市区町村民税の所得割額」が一定の金額を1円でも超えると、ガクっと補助が一切なくなる分岐点があります。
具体的には「市区町村民税の所得割額」が¥257,500を超えると「1人当たり3年間で約100万円の助成」が一切無くなることになりますので、奥様がパートなどで働いている場合には、せっかく働いた収入以上の助成が無くなることもありますので、ご注意下さい。
(特に2人以上の子供さんが私立高校に通う場合には家計への影響は大きいです)
さらに、高校生になるお子様が1人以上いる会社経営者の方は、自分の給与を決めることができますので、特に年収700万円~800万円(役員報酬の月額が60万円~70万円)ぐらいの方は、役員報酬の変更時期に子供さんが高校卒業までの毎年一度は、この「市区町村民税の所得割額」のおおよそ金額を顧問の税理士に、試算して頂くのも良いかと思います。
今年の入試では、都立高校の定員割れが急増したとのニュースがありました。
この私立高校の授業料の一部無償化(補助)により、年間90万円になる授業料などの実質負担金の約半分は自治体が負担してくれることになりますが、完全無償の公立高校よりも、折角ならば私立の高校に通わせようとする親御さんの考えや進学塾などの助言の影響でしょうか。
政府は、2020年度より私立高校の授業料の一部無償化をさらに上乗せする方針との報道も昨年末にありましたので、この流れは一層加速することでしょう。
最後になりましたが、あまり知られていませんが、私立高校だけでなく私立中学校に通う場合にも、金額は半分以下にはなりますが「私立小中学校等就学支援金」という制度もあります。
投稿者プロフィール
- 盛永崇也(東京の神田で開業している税理士/行政書士事務所の代表)
「税務相談/税務顧問や経理経営支援/法人申告・確定申告・給付金申請・相続手続の代行/法人設立や廃業支援や代行」など、法人個人を問わず、お金にまつわる様々なサポートをさせて頂いております。