代表税理士ブログ

【 最終更新日 】 2021.10.25

従業員が会社の車や備品を壊した場合には弁償させられるの?

会社さんから時々ある相談ですが、社員である従業員やアルバイトが

  • 会社の営業車を運転中に事故をおこして、修理が必要になった。
  • 会社のノートパソコンに飲み物をこぼして、故障してしまった。
  • 飲食店などの店舗のお皿を割って、破損してしまった。

この様な場合には、会社は従業員やアルバイトに対して、修理代などを請求することができるのでしょうか?

損害賠償の「請求」はできるけど・・・

従業員などの労働者が不注意などで、会社の車や簿品などを破損させた場合は、会社がその労働者に損害賠償の「請求」をすること自体は問題ありません。
従って、その「請求」を労働者自身が認めて、双方合意して弁償してもらうことは可能です。
多くの場合には、このような半強制的な合意により弁償させるケースが多くあるのが実情です。

会社の「就業規則」を確認

多くの就業規則モデルでは、会社が従業員に対して損害賠償を求めることができるケースとして「故意または重大な過失によって会社に損害を与えたとき」といった記載があります。

このような規定が存在している場合には、逆に従業員が「業務の過程で通常求められる注意義務」を尽くしている場合には、一切従業員の損害賠償義務は生じないことになります。

一度、会社の「就業規則」を確認してみるとよいでしょう。

「重大な過失」又は「故意」とは

従業員の単なるミスではなく、飲酒運転や居眠り運転により自動車事故をおこした場合などには「重大な過失」にあたります。
さらに、会社に嫌がらせするために備品を壊した場合などには「故意」にあたり、当然ですが、修理代などを従業員が支払う義務があることになります。

どれくらい修理費などの弁償義務がある?

仮に重大な過失があっても、多くの場合、従業員に100%損害賠償させることはできません。

裁判所の判決例などによれば、居眠り作業により会社の機械を破損させて従業員に修理費の25%の弁償義務を命令したケースや、チェーンを付けずに雪道を運転してスリップ事故をおこしたにも関わらず、従業員に修理費の10%の弁償義務となったケースもあります。

従業員側に過失があったとしても、弁償が認められる限度の相場は、実際の損害額の上限25%が相場といわれており、いずれにしても100%の弁償は難しいのが現状です。

その理由は、事故や備品などの故障・破損は「労働者がどんなに気をつけていても100%防げないこと」、会社は「労働者の労働によって利益を得ていること」により、逆にマイナス面である危機管理責任に関しても、会社側に一定の責任を負うべき義務があると考えるからです。

会社として事前にしておくこと&できること

就業規則に規定しておく

実際に事故が起きてから会社と従業員の間で負担の範囲を決めるのは、難しいので就業規則などに事故による破損の場合の費用分担について、高価な会社備品を使用する会社などで、あらかじめ、規定しているケースもあります。
(例)会社の備品を壊したら罰金10万円・車両事故をおこしたら車両修理費の2分の1を負担

ただし、労働契約においては、「損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と賠償予定が禁じられています(労働基準法第16条)ので違法ということになります。

もし就業規則に規定する場合には、『会社の車両や備品を壊したら損害賠償を求めることがある』程度の記載となります。

この記載によって、労働者が仕事上のミスにより会社に損害を与えた場合であっても、労働者はその損害を賠償する責を負うことになりますが、いくら労働者のミスによる損害とはいえ、業務上の損害については使用者責任を負う会社にも一定の責任があることには変わりありませんので、ご注意下さい。

弁償の方法

会社が一方的に損害額を相殺し、給与から天引きすることは、賃金全額払いの原則(労働基準法第24条)により違法です。
しかし、自由意思による「従業員の同意書」があれば賠償額の給与天引きも可能です。

よって、「合意書」をもらっておくと共に、分割支払の期間が長い場合や弁償金額が多い場合には、退職してしまって回収できない可能性を考慮して連帯保証人を付けてもらう必要もあります。

減給処分をする

会社の備品などの資産を壊したことを理由として、損害賠償せずに、給与の減給を行う場合にも注意が必要です。

少額の損害に対して、その損害以上の減給処分を行うことは、何度注意しても繰り返される場合を除いて、社会通念上相当とはいえません。
その減給の金額は、労働基準法において原則「1ヶ月の給与の10分の1以下の金額」までと定められています。

仮に1ヶ月の給与が30万円の場合には、1ヶ月では3万円までしか減給することはできません。

保険に加入する

仮に従業員に過失があっても、その業務上で生じた車両や備品などの損害については、会社として最低75%以上の危険管理責任があるのは、先に述べた通りです。
それに備えて、会社は、事前に保険を加入する対策をしておく必要があります。

営業車を保有する会社の場合には、もらい事故などの交通事故も想定して車両保険の加入し、高価なパソコンなどの備品を業務で使用する会社の場合には、アフターサービス保険に加入することを強くオススメします。

これにより、万が一の損害が生じた場合にも、従業員と会社の双方の負担を結果として大幅に軽減することができ、就業規則などに罰則規定を設ける必要などは一切なくなり、労使双方が気持ちよく、長く働ける環境を整えることにつながります。

投稿者プロフィール

東京パトレ税務法務オフィス
東京パトレ税務法務オフィス
盛永崇也(東京の神田で開業している税理士/行政書士事務所の代表)

「税務相談/税務顧問や経理経営支援/法人申告・確定申告・給付金申請・相続手続の代行/法人設立や廃業支援や代行」など、法人個人を問わず、お金にまつわる様々なサポートをさせて頂いております。

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