平成27年9月に成立した「改正マイナンバー法(番号利用法)」により、平成28年1月からマイナンバー制度がスタートして、早いもので約2年が過ぎました。
税務署や市区役所を初めとして、証券会社・保険会社・銀行に続き、年金事務所や職業安定所などで続々と導入されています。
最近では、取引している証券会社や銀行などから「マイナンバーを確認させて下さい!」と言われたとの話をチラホラ聞くようになりました。
ということで、今一度この「マイナンバーの対応状況」を確認してみました。
マイナンバーとは
マイナンバーとは、日本に住民票を有するすべての方(外国人の方も含まれます)が持つ12桁の番号のことです。
マイナンバーの「通知カード(グリーンの紙)」「マイナンバーカード(顔写真入りのプラスチックカード)」のほか、「マイナンバー記載の住民票の写し」により確認することができます。
税務署のマイナンバー対応の状況
平成28年分の所得税・贈与税の確定申告書からマイナンバーの記載が、すでに求められております。
相続税についても、平成28年1月1日以降の相続により財産を取得した方の申告書には、相続人のマイナンバーの記載が求められるようになっております。
これにより、税務署のほぼ全ての手続に「マイナンバー」がすでに完全実施されております。
証券会社のマイナンバー対応の状況
平成28年1月から『口座開設』の際にマイナンバーの通知が義務付けられています。
すでに、平成27年12月以前に口座を開設された方についても、「平成30年12月31日まで」に、証券会社へのマイナンバーの提供が義務となっています。
NISA口座などでは、届出をしていないと新たな買い付けができないなどの制裁もあります。
生命保険会社のマイナンバーの対応状況
生命保険会社については、平成28年1月以降に下記に該当する保険金(満期・年金・死亡)の支払いを受ける場合には、マイナンバーの通知が必要となります。
これは、生命保険会社が税務署に対して、「支払った保険金ゆ保険契約者と保険金受取人のマイナンバーを記載した支払調書」という書類(データ)を提出することが義務付けられているからです。
したがって、下記の保険金を受け取るまでは、現在加入中の生命保険などについてマイナンバーの通知などは特に必要ありません。
- 受け取る保険金・解約返戻金等の一時金が100万円を超える場合
- 年間の年金支払額が20万円を超える場合
- 相続等生命保険年金に該当する場合など
銀行のマイナンバーの対応状況
平成28年1月から、下記の「投資信託や個人向け国債などの商品を購入するために新規に口座開設」する場合などには、マイナンバーの通知が求められます。
【マイナンバーの提示が求められる取引】
そして、平成27年12月以前に、すでに口座を開設された方についても、証券会社と同様に「平成30年12月31日まで」に銀行へのマイナンバーの提供が義務とされました。
ただし義務でありますが、経過措置で「3年間は任意」とされ、本格的な義務化は、『2021年1月1日から』の予定です。
この任意の3年間は、経過措置があるので、金融機関からマイナンバーの提示を求められても、断ることも可能ですが、スマートフォンのアプリを利用する「インターネットバンキング」などは、どうやらマイナンバーを通知しないと利用できない仕様に変更となるようです。
日本年金機構のマイナンバーの対応状況
平成29年1月1日以降の「年金の受給関係の届出書」にマイナンバーを記入欄が、すでに設けられております。
そして、平成30年3月5日からは、個人が年金の受給を受ける場合だけでなく、会社などが「社会保険(健康保険・厚生年金)の加入届出」をする際に、原則としてマイナンバーを記入することなりました。
そして同時に、市区役所において行う「国民年金の被保険者関係届書」についても同様に、原則としてマイナンバーを記入することなりました。
ハローワーク(職業安定所)のマイナンバー状況
以前よりハローワークに提出する書類には、マイナンバーの記入欄はありましたが、特に記入しなくても問題なく手続が可能でした。
それが、平成30年5月1日以降は、必要な届出についてはマイナンバーの記載・添付が義務付けられております。
ハローワークの案内によると、『マイナンバーの記載添付がない場合には返戻します』という過激なコメントも記載されています。
マイナンバー導入による影響などについて
内閣府(政府)の説明によると、マイナンバーは下記の目的があるそうです。
(内閣府HPより引用)
政府の目的はさておき、ご覧の通りマイナンバーの本格導入が、続々とすすんでいます。
銀行の対応がすすむと、税務署は「個人の過去の収入や所得」だけなく、「全国の銀行預金口座とマイナンバーの紐づけが可能」となります。
この導入により、その効果が大きいものの一つは、『税務当局による相続税の相続財産の把握』だといわれています。
対象者(亡くなった方だけでなく、全相続人の方も)の預金口座を特定するために「住所の周辺の金融機関や勤務地の近隣の金融機関の調査」や「自宅での調査時の金融機関からの郵送物やカレンダーを見つける」という今までの原始的な方法は、一切必要なくなり、瞬時に銀行口座が特定できることになります。
銀行口座の特定さえできれば、税務当局は、その後は今まで同じように、被相続人(亡くなられた方)だけでなく、相続人(親族の方)の銀行預金の「過去10年分の取引記録(通帳記録)」を職権で銀行等から、簡単に取得できますので、遠く離れて住んでいる親族の名義預金も、網羅的に情報収集が容易になります。
よって、このマイナンバー導入により、相続税の申告の際に一番問題となる「未申告口座」のほか「名義預金」や親族間の預貯金の移動である「贈与」などの指摘を受ける可能性が上がることになりますので、相続税対策の際には注意が必要となります。
われわれ専門家が相続の手続きのお手伝いをする際に、時々ご親族も知らない銀行口座をたまたま発見することがあります。
逆にいうと、発見されずにそのままになってしまう銀行預金も相当数あると思われます。
そんなことにならないように、このマイナンバー導入により「名寄せされた銀行口座の情報」を全国銀行協会などで、税務当局だけでなく相続人や代理人に開示してもらえる制度ができればと切に願っております。
この記事は、執筆日現在の法令などに基づくものであり、その後の法改正によるアップデートは原則としてしておりません。
『マイナンバーは、本当に国民のためになっているの?実感したことないけど…』
ほとんどの方が、この様な感想をお持ちかと思います。
正直、様々な事務手続をさせて頂く我々専門家でも、また一個人としても、まだ「マイナンバー」が実施されて良かったと実感したことは、残念ながらほとんどありません。
逆に、我々事務の専門家やお勤めの会社などは、その手続きに「多大な時間」とシステムなどに「お金」を費やしています。
そんなマイナンバーに、あまりメリットは期待はしていませんが、個人情報の漏洩などでデメリットばかりの制度にならないように期待しております。
投稿者プロフィール
- 盛永崇也(東京の神田で開業している税理士/行政書士事務所の代表)
「税務相談/税務顧問や経理経営支援/法人申告・確定申告・給付金申請・相続手続の代行/法人設立や廃業支援や代行」など、法人個人を問わず、お金にまつわる様々なサポートをさせて頂いております。