代表税理士ブログ

【 最終更新日 】 2021.10.26

報酬料金の源泉所得税は「支払調書」を渡すの?引き忘れた場合の4つの対応方法

お正月気分もぬけてくるこの頃、そろそろ確定申告の気配が近づいてきます。

その気配が近づくこれからの時期に顧問先様から、報酬料金等を支払ったフリーランスの方から、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を依頼されているので急いで送って下さい!との依頼が事務所に多くなります。

これもよく質問されるので、先に言っておきますが、
報酬料金をフリーランスの方などに支払った会社側には、必ず『支払調書』を発行しなければならないという義務はありません。
(税務署に対しては、翌年1月31日までに提出する義務があります)
『支払調書』を発行してくれる会社は、あくまでも「善意」で発行してくれているということになります。

これも勘違いされている方がいますが、
フリーランスの方が確定申告書を提出するときに『支払調書』の添付義務はありません。
(一部の各種控除証明書は、原本添付の義務があります)

今回は、あまり馴染みがない、こんな『報酬料金にかかる源泉所得税』についての記事です。

報酬料金にかかる源泉所得税とは


個人(法人は対象外)に報酬を支払う事業者が源泉徴収義務者の場合で、その個人に支払う事業が下記の「源泉徴収が必要な報酬・料金等」に当てはまる場には、報酬額から源泉所得税が差し引かれて支払わなければならないことになっております。

この源泉所得税とは、サラリーマンの給与と仕組みは全く同じで、その個人に支払をする側が、あらかじめ一定割合の所得税を差し引いて支払をして、その差し引いた源泉所得税は税務署に納付するというものです。

最終的には、その個人が確定申告する際に、この分は所得税の前払として税金を計算して、税金を払いすぎた場合には、払いすぎた税金を還付してもらえ、税金が不足する場合には、追加して税金を納税することになります。

源泉徴収の対象となる報酬・料金等

源泉徴収(税金を差し引くこと)をしなければならないものは、下記のようなものがあります。

  • 原稿料や講演料など(デザイン料、作曲料、指導料、通訳料なども)
  • 弁護士や公認会計士などの特定資格をもつ人に支払う報酬
  • 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  • プロスポーツ選手やモデル、外交員などに支払う報酬
  • 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬
  • 旅館などの宴会で、客に接待をする仕事(ホステスなど)に支払う報酬
  • プロ野球選手の契約金など
  • 宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金など

会社が源泉所得税を引き忘れた場合の処理方法

① 支払先から10%返してもらう方法(原則の処理)

引き忘れた源泉所得税を返してもらい、その税額を税務署に納付する

② 次回支払時に精算する方法(例外の処理A)

毎月支払のある支払先の場合に次回支払分から引き忘れ分を差し引く

③ 引き忘れ分を負担する方法(例外の処理B)

負担の増えるのであまり得策とは思えませんが、返してもらったりできない場合や次回の支払がない場合には、支払った金額を源泉所得税を控除後の金額と換算して計算します。
最近はあまり見かけなくなりましたが、手取金額での契約の場合と同様の計算となります。

(例)10万円の請求に対して源泉所得税10,210円(10.21%)を引き忘れて支払ってしまった場合

  • 支払金額:100,000円÷0.8979=111,370円
  • 源泉徴収税額:111,370円×10.21%=11,370円(1円未満切捨)
  • 手取額:111,370円-11,370円=100,000円として経理処理し、11,370円を税務署に納付する
    ※消費税の計算を考慮すると説明が複雑になるので、すべて税込としております。

④ 何もしない方法

何もせずに、後日税務調査で源泉徴収漏れを指摘された場合に引き忘れの税額を支払うことになります。
この場合には、不納付加算税が10%上乗せされると共に、延滞税もかかります。

正式な処理は①だけです。
②~④の処理はあくまでも実務上の対応です。

源泉所得税の範囲と税額の計算方法

源泉所得税の範囲と税額の計算方法は、下記となります。


[国税庁HPより引用]

最後に

最後に、問い合わせや誤りが多いのが下記の3点について

ホームページの作成を雇用関係のない個人の知り合いに依頼したケース

ウェブサイトの作成は、第204条第1項第1号の報酬料金に記載がないので、源泉徴収の対象外となります。(但し会社ロゴなどのデザイン料などを分けて支払っている場合には対象となるケース有り)

行政書士に報酬を支払う場合

上記の表の源泉徴収の対象となる対象者には、弁護士、税理士のほか18の士業が対象とされていますが、何故だか行政書士の記載がありません。
したがって行政書士に対する報酬は源泉所得税を差し引く必要はありません。

相手先が法人の場合

第204条第1項の報酬料金を支払う場合でも、支払先が「法人」のときは、馬主である法人以外は源泉徴収の必要はありません!!
あくまでも「個人に支払う場合のみ」です。ご注意下さい。

投稿者プロフィール

東京パトレ税務法務オフィス
東京パトレ税務法務オフィス
盛永崇也(東京の神田で開業している税理士/行政書士事務所の代表)

「税務相談/税務顧問や経理経営支援/法人申告・確定申告・給付金申請・相続手続の代行/法人設立や廃業支援や代行」など、法人個人を問わず、お金にまつわる様々なサポートをさせて頂いております。

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