代表税理士ブログ

【 最終更新日 】 2021.10.22

個人のビジネスを法人化する(会社設立)のメリットとデメリット【節税・設立費用・社会保険編】

「フリーランスなどの自営業の方」や「副業をしている個人の方」からの個別相談で一番多いのが『会社を設立して法人化することに興味があるので一度相談したい!』 というもの。

そのような方に、今回は「会社設立による法人化のメリットとデメリット」についてなるべくわかりやすく、まとめてみました。

会社設立のメリット

節税などの税金対策

個人事業での「利益(もうけ)」にかかる税金は、「所得税・住民税・個人事業税」があり、それぞれの税率は「所得税(5%~45%)・住民税(10%)・個人事業税(3%~5%)」となっており、個人事業の所得が増えれば増えるほど税率が上がっていきます。

それに対して、中小企業である法人の利益にかかる税金は「法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・地方法人特別税」がありますが、そのすべての税金の実行税率は、下記の通り、法人の所得が増えても個人事業に比べて税率の変化があまりありません。

そのため、おおよそ年間の所得が500万円を超えると、個人事業を法人化した方が節税になるケースが出てきます

さらに、ビジネスが赤字の場合でも、個人事業主の場合には3年間しか赤字を繰り越すことができないのに対し、法人の場合には10年間赤字を繰り越すことはできるので、先行投資がかさむビジネスの場合には、特にメリットがあります。

中小企業である法人の実効税率
  • 400万円以下の所得金額(約21%)
  • 400万円~800万円の所得金額(約23%)
  • 800万円超の所得金額(約33%)

信用が上がる

一般的なことですが、個人よりも法人の方が信用力が高く、取引先や金融機関との取引だけではなく、人員の採用についても、法人化した方がやりやすくなります。

会社設立のデメリット

会社の設立のための費用がかかる

法人を設立するためには、法務局などへ支払う実費が必要となります。
また、司法書士などの専門家にすべての手続を依頼する場合には、通常は別途手数料がかかります。

合同会社の設立費用(実費)

 6万円~10万円

 内訳

定款印紙代(※0~4万円)+登録免許税(6万円)
※行政書士や司法書士による電子定款の場合には0円

株式会社の設立費用(実費)

 202,000円~242,000円

 内訳

定款印紙代(※0~4万円)+登録免許税(15万円)+定款の認証手数料(5万円)+定款の謄本手数料(0.2万円)
※行政書士や司法書士による電子定款の場合には0円
その他に、会社の実印の作成費用(約5,000円~)や印鑑証明書や登記簿謄本(履歴事項証明書)を取得するための費用もかかります。

社会保険への加入が強制

社会保険(健康保険・厚生年金)の加入は、個人事業では原則5名以上雇用している場合にのみ強制加入となりますが、 法人化すると雇用する人数に関係なく、強制加入となります。(給与の支払いが一切ない場合を除く)

社会保険料の負担

社会保険料は、会社側と働く側(役員や従業員)が折半で支払いますが、毎月の給料の金額に対して、それぞれ約15%で、合わて約30%を支払うことになります。

従業員を雇用している場合には、給料などの人件費のほかに、社会保険料の負担が上乗せされることになるのが、法人化する場合の大きなデメリットです。

ただし「従業員を雇用していない所得の少ない副業」などのビジネスを法人化する場合や、ご家族が多い方などの場合には、逆に社会保険の負担が少なくなることが多くあります。

社会保険料を支払う期間が伸びる

もう一つのデメリットとして、社会保険には、下記のように年齢条件が変わりますので、注意が必要です。

具体的には、現在60歳以上の方は、今は年金(国民年金)を支払う義務がありませんが、社会保険に加入すると70歳になるまで年金を支払うことになります。

会社を設立する前に、自分の社会保険の支払いなどの負担がどのように変わるのか、必ず事前にシミュレーションをしましょう。

個人事業主の支払期間
国民健康保険(75歳以上の方は後期高齢者健康保険)+国民年金(20歳以上60歳未満の方)
法人の役員や従業員の支払期間
健康保険(75歳以上の方は後期高齢者健康保険)+厚生年金(70歳未満の方)

法人は赤字でも税金の支払いがある

個人事業であれば、所得がない赤字の場合には、所得税や住民税の負担はありませんが、法人の場合には、資本金の金額により「均等割という住民税」が毎年かかります。
(資本金が1,000万円以下の場合には、年間7万円)

税務署への申告や社会保険の事務手続きが増える

個人事業主の方は、税務署への確定申告の手続きについて、税理士などに依頼することなく、独力で手続きを行なっている方も少なくありません。

それに対して、法人の申告手続きは、複式簿記に対応した会計ソフトなどにより経理処理が必要となり、提出先も増えるだけではなく、下記のように申告するための書類も増えるだけではなく、様式もとても複雑怪奇で、そのための事務手続きも増えることとなります。

したがって、自分自身で法人の申告手続きをするのは、かなりハードルが高いのが現状です。

個人事業主の申告

 提出先
  • 税務署のみ
 提出書類
  1. 所得税の確定申告書(B様式)
  2. 青色申告決算書(青色申告)又は収支内訳書(白色申告)
  3. 消費税の確定申告書(納税義務者のみ)

法人の申告

 提出先
  • 税務署
  • 都道府県税事務所
  • 市町村役場(東京23区を除く)
 提出書類

【税務署】

  1. 法人税申告書(別表)
  2. 決算書(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書など)
  3. 勘定科目内訳明細書
  4. 法人事業概況説明書
  5. 適用額明細書
  6. 消費税の確定申告書(納税義務者のみ)

【都道府県税事務所】

  1. 法人住民税・法人事業税の確定申告書

【市町村役場】

  1. 法人住民税の確定申告書

まとめ

個人事業から法人化すると、節税や社会保険料の負担を抑えることができることがある反面、会計や申告などの手続きの負担が増えることになります。

法人化をすれば、必ずメリットがあるわけではありません。
そのメリットをしっかり受けるためには、会社設立後の「役員報酬の金額」「経費の計上の仕方」などが大きく影響するので、税理士などの専門家に相談することをオススメします。

最後に

「自分自身で法人を設立する方へのおすすめサイト」のリンクを2つ載せておきますので、お役立てください。

会社設立freee

クラウド会計のfree株式会社が提供している、無料で設立書類が作成できるサービス。
https://www.freee.co.jp/launch/

Money Forward 会社設立

クラウド会計の株式会社マネーフォワードが提供している、無料で設立書類が作成できるサービス。
https://biz.moneyforward.com/establish/

この記事は、執筆日現在の法令などに基づくものであり、その後の法改正によるアップデートは原則としてしておりません。

編集後記

今年も残り3ヶ月をきり、近頃では日が沈むのも早くなりました。
10月からの消費税の増税対応についての相談は一段落しましたが、我々税理士は、会社の「年末調整の準備」もとうとう始まり、すぐに「確定申告への準備」もやってきます。

今年も、いろいろな方との個別相談の時間が、できるだけゆっくり取れるように、計画的な『事前準備』をがんばります。

投稿者プロフィール

東京パトレ税務法務オフィス
東京パトレ税務法務オフィス
盛永崇也(東京の神田で開業している税理士/行政書士事務所の代表)

「税務相談/税務顧問や経理経営支援/法人申告・確定申告・給付金申請・相続手続の代行/法人設立や廃業支援や代行」など、法人個人を問わず、お金にまつわる様々なサポートをさせて頂いております。

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