代表税理士ブログ

【 最終更新日 】 2023.05.1

2022年に首都圏の土地価格が暴落する「生産緑地の2022年問題」

生産緑地地区

先週受講した講習で、講師の先生が雑談として、お話された表題の内容を深掘りしてみました。

2022年以降に首都圏などの大都市圏の土地価格が大暴落する可能性が高い

2020年の東京オリンピック景気が終わり、不景気になるからという漠然とした理由ではありません。
2020年以降に、明らかに首都圏などの大都市圏の土地の需給バランスが大きく崩れるのです。

暴落の原因は?

2022年以降、大都市圏に多くある生産緑地のほとんどが、マンションや一戸建てなどの住宅用地として大量に売りに出されるのが原因とのこと。
生産緑地は、国土交通省の「平成27年都市計画現況調査」によると、全国で現在1万3442ヘクタール(約40,000万坪)が存在しています。
そのうち放出が約70%されると予想すると、その土地の面積は、実に約1億平方メートルとなり、ほとんどピンとこない面積なので調べてみたらこれは千代田区面積の10倍の面積だそうです。
この面積と同じ広さの土地が市場に供給されることになり、これだけで住宅用地の価格が場所によっては30%以上下落するとの予想もあるようです。

不動産の価格は言うまでもなく「需要」と「供給」で決まりますが、大都市圏の住宅価格には非常に大きな下落が見込まれるのは確実とのことです。
この問題は不動産市場の「生産緑地の2022年問題」といわれ、不動産業界では周知な事として大きな懸念をもっており、それを念頭にハウスメーカーだけでなくマンションデベロッパー、アパート建設会社などが、不動産の入手を中長期計画を立てて、虎視眈々と商機をうかがっているとのこと。

何も知らないで、特にすぐそばに生産緑地がある戸建て開発を最近購入した、またはこれから購入する一般の人は、数年すると購入したばかりの土地の価格が30%以上下落すると見込まれているそうです。

生産緑地とはどこにあるの?

周辺に生産緑地がどこにあるか調べる方法ですが、多くの各市区町村ではHPなどで都市計画図が公開されています。
お住まいの地域を一度みておいた方がよいかと思います。

ちなみに、不動産市場に放出される可能性のある地域は東京23区、首都圏・近畿圏・中部圏内の政令指定都市などで、東京都には3296ヘクタール(=9,970,000坪)ある生産緑地がすべて宅地化された場合、約25万戸の一戸建ての建設が可能とのこと。

この25万戸という数字もあまりピンとこないので調べてみたら、2016年の東京都での新築一戸建て着工戸数は13万戸強なので、その2年分。
戸建て住宅ではなくて、マンションやアパート用地になる用地もあるので、戸数はその数倍になることもあるはずで、2017年現在、全国の空き家数はおそらく1,000万戸を突破しているといわれているので、このままでは空き家増加に歯止めがかからなくなるのは確実です。

生産緑地法とは

昭和49年頃、都市圏において都市化が進み、緑地が宅地などに転用されることが増え、市街地における緑地の減少しました。
それにより住環境の悪化などの問題となり、農地の有する環境機能などを考慮し、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境を形成していくという目的でと、生産緑地法が制定されました。

その生産緑地法は、その後1992年の改正によって、市街化区域内の農地は、農地として保全する「生産緑地」と、宅地などに転用される農地に分けられ、この「生産緑地」に指定されると固定資産税は農地並みに軽減され、相続税の納税猶予を受けることも可能になりました。
「生産緑地」の所有者はこうした優遇措置を受け、その代わりに建築物を建てるなどの行為が制限も受けています。

この「生産緑地」とは原則としてすべて、政令地方都市の住宅建設可能な市街化区域内にあり、その法律の期限は30年とされています。

この先どうなる

改正された1992年から30年後の期限が2022年であり、2022年以降、生産緑地の多くが宅地化する可能性が高いということです。
この期限到来時に所有者が病気などで農業に従事できなくなったり、死亡していた場合には、所有者は市区町村の農業委員会に土地の買い取り申し出を行えます。

ただし、この買取申出に対し自治体などの市区町村は、特別の事情がないかぎり時価で買い取るものとされているが、市区町村が買い取らなかったり、生産緑地として他に買う者がいない場合には、この生産緑地指定が解除されるとのこと。
これまでの実績では、予算不足などの理由から、自治体による買取りの実績はほとんどないので、このままでは、ほぼ生産緑地指定が解除される可能性が高いことになります。

解除されると、土地の所有者が毎年納付する優遇されていた固定資産税が数100倍となり、所有者は土地を持ち続けられず、売却することに。
売却先は、一戸建てを建設するハウスメーカーで、立地がよければマンションデベロッパーになるが、主に戸建て住宅が建設され、立地に難のある土地では固定資産税や相続税評価額の軽減を目的にアパート建設され、首都圏などの住宅価格が大幅に下落し、アパートなどの空室率が高まることが、不動産業界では周知のこととして「生産緑地の2022年問題」として懸念されています。

国の対策は

国は、生産緑地の指定期限が切れた2022年以後も、10年毎の延長を可能とする「改正都市緑地法」を2017年6月に施工した。
しかし、このままでは実際に延長ができるのは、所有者が農地を維持できる後継者がいる場合に限られるので、実質的な対策にはなっていないとのこと。

最後に

特に、近くに生産緑地がある住宅地にマイホーム購入を予定している人は、住宅ローンの金利の動向をみながら、できたら2022年以降に購入する。宅地の売却を予定しているならば、なるべく早めに売却する。
不動産業界の人間ではない一般人ができることは、こんなところではないでしょうか。
余談ですが、現在ローンを返済中の私の自宅の30メートル北側には、一般住宅が50戸は造成できそうな、立派な生産緑地があります。

編集後記

昨年の10月に自己啓発のために、宅地建物取引士(旧宅地建物取引主任者)の試験を受けました。
仕事には影響が出ないように、学校などには行かず、書籍とYoutube 動画による独学で、試験申込後の通勤時間往復2時間に限定して勉強していました。
結果は、合格点ギリギリで何とか合格。
その登録のために、先週の週末2日間で延15時間の登録実務講習を受けてきました。
講習の先生が、実際に不動産会社を社員を抱えて長年経営されている経験豊かな方で、我々税理士業界に対する文句など、不動産会社の目線でのお話を長時間聞けたのは、思っていた以上に収穫でした。
今回の記事の元となったた講習とは、この登録実務講習のことです。

投稿者プロフィール

東京パトレ税務法務オフィス
東京パトレ税務法務オフィス
盛永崇也(東京の神田で開業している税理士/行政書士事務所の代表)

「税務相談/税務顧問や経理経営支援/法人申告・確定申告・給付金申請・相続手続の代行/法人設立や廃業支援や代行」など、法人個人を問わず、お金にまつわる様々なサポートをさせて頂いております。

最近の記事 おすすめ記事

ブログ記事(カテゴリー別)

PAGE TOP