昨年は、相続についての相続税申告や名義変更などの手続が多い一年でしたと以前書きましたが、相続手続に関する相談の中で一番お話させて頂くことが多いのが、この銀行口座が凍結されるという問題です。

また、亡くなられてから時間が経っていない場合には、特にこの銀行口座については、すぐに対応しないといけない問題でもあります。

2018年7月の「相続される預貯金の仮払い制度」の創設(法律改正)に伴い、一部内容を訂正・追加しました。(2018年9月20日)

亡くなった直後の預金の引出しは可能?

当然のことですが、亡くなった方の預金の引出しは、親族の方がキャッシュカードを持っていて、暗証番号もわかっている場合には、普通預金などの通常預金については、実質ATMにて1日あたりの引出限度額の範囲内で引出しができてしまいます。

では、キャッシュカードがないときや暗証番号がわからないときは、預金を引き出すことは可能なのでしょうか?

時系列に解説しますが、取扱いは金融機関によって、取扱いが異なることがありますので、事前に金融機関に確認するなどして下さい。

亡くなる前(ご臨終前)

金融機関の口座の名義人の預金を、名義人本人以外のご家族が引き出すことは、原則可能です。

具体的には、口座名義人である本人が「病気などで入院している、施設に入居しているなどの理由」で、金融機関の窓口に来られないときでも、「本人の入院費用や施設費用の支払いなどの当面の生活費」については、一定の手続きをすることにより、原則として預金を引き出すことができます。

ただし、「本人からご家族への委任状」や「身分証明書などの本人との関係がわかる書類」などの書類が必要となりますのでご注意下さい。

亡くなった後(ご臨終後)

金融機関の口座の名義人本人が亡くなったときには、原則として、名義人の口座の取引はできないこととなり「口座が凍結」されることになります。

口座が凍結されるタイミングは、それぞれ金融機関によって異なりますが、凍結されてしまうと「預金の引き出しや預け入れ」のほか「口座引落し」もできなくなります。

ただし、下記の2つの場合には、相続人全員による遺産分割協議がなくとも、例外として引き出すことができます。

葬儀費用や当面の生活費

預金の引出ができないと、葬儀ができない、家賃や食費の支払いができない、口座引落も停止されているので光熱費や税金の支払いもできないなどにより、残された家族は困ることになります。

そのような方のために、例外として金融機関に申し出ることにより、「葬儀費用」や「当面の生活費」については、一定金額までは引き出すことができるという運用になっています。

実際に預金を引き出すための窓口での手続きは、金融機関によって大きく異なりますので、事前に窓口にて確認して下さい。

ただし、仮に引き出しが可能だからといっても、特に相続人が複数いる場合には、その後の相続(争続)トラブルになることもありますので、ご注意下さい。

相続される預貯金の仮払い制度(2018年7月13日より)

2018年7月6日に、民法が改正され『預貯金の仮払い制度』が設けられました。(正式名「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」新民法909条の2)

これにより、預貯金のうち「生活費や葬儀費用の支払い」や「相続債務の弁済」などのために必要なものについては、相続人全員による遺産分割前であっても払戻しが受けられる制度が創設されました。

払い戻し(引出し)することができる金額については、下記の計算式の金額が限度となります。

払い戻し限度額の計算式
(相続開始時の預貯金債権の額)×1/3×(当該払戻しを行う共同相続人の法定相続分)単独で払戻しをすることができる額
【計算例】預金600万円で相続人2人(長男と次男)の方の預金を長男が仮払いするケース
預金600万円×1/3×1/2(長男の法定相続分)長男100万円払戻し可能

葬儀費用はいくらまで引き出せるの?

銀行などの金融機関の預金口座は、口座名義人(亡くなった方)の預金の引き出しは、原則として相続人全員の同意がないと引き出すことができないことになっており、そのために「戸籍謄本などの相続関係書類」や「相続人全員の印鑑証明書」の他に「遺産分割協議書など」が必要で時間もかなりかかります。
これは、預金口座の預貯金は「相続財産」であり、金融機関がトラブルを避けるために、この様な運用をしています。

ただし、預金の引出ができないと葬儀ができないなどのケースがあるため、例外として葬儀費用に使いますと申し出ることにより、簡易的に葬儀費用程度の金額までは引き出すことができることとなっています。
その限度額は、一般的に100万円〜150万円と言われてはいますが、現実には500万円引き出しできた方もいらっしゃいましたので、金融機関により異なりケースバイケースです。
なお、葬儀費用の引出しに際しては、金融機関によって異なりますが、下記のような書類が必要となります。

ゆうちょ銀行の場合
  • 葬儀費用の請求書(見積書)
  • 被相続人と相続人の関係がわかる戸籍謄本
  • 死亡診断書コピー
  • 銀行で手続きを行う相続人の本人確認書類(運転免許証等)
  • 銀行所定の書類(実印を押印する)

預金を引出した方がよい?引き出さない方がよい?

お亡くなりになる前やお亡くなりになった直後には、『預金は出来るだけ引き出した方がよいと聞いたのですが、本当ですか?』と聞かれることがあります。
お葬式などの葬儀費用や経読料・戒名料のほかに、初七日や四十九日の法要費用も含めるとかなりの金額がかかります。
したがって、立て替えできるご親族の方がいる場合やすぐに保険金の受取りが可能と見込まれる場合以外は、これらの費用を口座が凍結される前に、窓口にて葬儀費用に使う旨を告げる方法ATMにて引き出しておいたほうが安心できます。

それ以外の預貯金を焦って引き出してしまうケースがありますが、特に相続人が1人でない場合に後々問題となります。

引き出さない方が良い理由

  • 相続人の一人が勝手に引き出すことにより、他の相続人の不信感を買うことになる
  • 引き出したお金を特定の相続人の口座に入金した場合、後々相続人の間でトラブルになることになる
  • 引き出したお金を現金で保管することになり、盗難などの保管の安全性に問題がある

引き出したほうが良いケース

逆に言うと、相続人が1人であることにより相続人の間でのトラブルが無いことがない場合には、後々の金融機関での正式な相続手続き(名義変更手続き)の手間を省略するために、預金を全て引き出して相続人の口座に入金した方が良いこととなります。

ATMでの1,000円未満の引き出し方法

少額の預金口座は、相続でトラブルになる原因になることはあまり考えられないので、正式な名義変更の手間を考えると可能であればATMなどで全額を引き出しておくのが得策です。
仮に1,000円程度の預金口座のお金を引き出すために、各種書類を有料で揃えて、その後時間をかけて何度も銀行の窓口に足を運ぶことは合理的ではありません
従って、暗証番号がわかる場合にはATMにて引き出すことになりますが、ATMのほとんどが硬貨の引き出しに対応していません。
その場合下記の方法により全額を引き出す事が可能です。

<預金残高が890円の場合>
  1. ATMにて通帳記入して預金残高を確認
  2. 銀行支店にある硬貨入金に対応しているATMにて110円を入金
  3. 預金残高が890円+110円=1,000円となる
  4. ATMにて1,000円引き出して全額引き出しが完了
カンタンな方法なので、1,000円未満の残高をそのままにされることのないように、是非お役立てください。

銀行口座が凍結される原因

銀行口座が凍結されるのは、下記が主な原因です。
よって、いずれにも該当しない場合には、銀行預金がいつまでも凍結されないことになります。

預金口座凍結の原因
  • 親族や遺言執行者などの方からの連絡
  • 親族が葬儀費用の申出をしての預金の簡易引出し
  • 市(区)役所への死亡届や健康保険や税金に関する届出の提出によるもの
  • 市(区)役所による、金融機関への健康保険料や税金の引落し停止手続きによるもの
  • 受給されていた年金の支給停止手続きによるもの
  • 公共料金やクレジットカードなどの各種利用サービスの停止連絡によるもの
  • 新聞などの訃報欄などの情報など

1番早く凍結される預金口座は?

1番早く凍結される預金口座は、健康保険、介護保険、住民税や固定資産税などの支払いをしている銀行口座です。
これは、葬儀後に一番早く手続きすることが多い市役所(区役所)への各種届出によるからだといわれています。

市役所(区役所)の各種届出による口座凍結までの流れ

死亡届の提出
市区役所には、死亡後7日以内に死亡届を提出します。多くの場合は、その後の火葬許可証の入手の関係上、葬儀会社が代理提出してくれます。
ご葬儀後の市役所(区役所)への各種届出
健康保険証や介護保険証の返却(資格喪失の届出)
国民健康保険の埋葬料請求
世帯主の変更届
個人番号カードの返却手続など
各種保険料や税金の自動引落の取り止め手続
健康保険、介護保険、住民税や固定資産税などの支払いを銀行口座からの自動引落しを依頼している場合には、市区役所は引落口座である金融機関に自動引落しの取り止めを直接依頼します。

この最後の手続により、信頼ある情報元である市区役所より、その金融機関に対して「預金口座の方は亡くなられた」との情報がいくことにより、金融機関は相続トラブル防止しなどのために、銀行口座の凍結を実施することとなります。

編集後記

執筆している本日(平成30年1月22日)は、首都圏で4年ぶりの大雪の警報が出ており、東京都心でも現在かなりの降雪です。
帰宅の電車の運行を考えて、顧問先の会社でも従業員に早めの帰宅を勧めているようです。
私も電車が止まる前に、仕事をカバンに詰め込んで早めに帰宅します。

投稿者プロフィール

東京パトレ
東京パトレ
東京神田で税理士・行政書士として中小企業の方やフリーランスの方などに「各種税金の申告業務」のほか「税務相談」「開業支援」「会計ソフト指導」「WEB関連支援」などの仕事をしています。『役に立つ税金情報』を中心に『日々の仕事上で気になったこと』など「お金にまつわる情報」を中心に執筆しております。