商売をしている人にとって、キチンと申告していても『税務調査』と聞くと「やだなー」「怖いなー」 「気が重いなぁー」と思うはずです。
税務調査のシーズンでもある7月から11月までのこの時期、今回は『税務調査の対象になりやすい法人とは?』についての解説記事です。
税務調査のどれくらいで来るの?頻度は?
最近の国税庁公表の数字によると、1年間で税務調査を受けた法人の割合は、全法人数のうち年間4~5%程度となっています。
ということは、税務調査は、思ったよりも少なく全国平均では「おおむね20年に1回」程度くるということになります。
しかし、20年以上の自分自身の経験では、会社設立して3年後に調査になる会社もあれば、30年間ずっと調査のない会社もあり、会社によって様々です。
さて、税務調査の対象になりやすい会社とは、どのような会社でしょうか?
税務調査の対象になりやすい会社とは?
間違いないのは、下記のような法人です。
- 過去の税務調査で多額の申告漏れが発覚した会社
- 事業規模が大きい会社
- 毎年消費税の還付を受ける申告をしている会社
こんな会社は、間違いなく調査対象となりやすいといえます。
会社ごとの事情によるもの
当然ですが、会社によって業績などの事情は違います。
そんな事情を『KSKシステム(国税総合管理システム)』という申告書などの情報を一元管理しているシステムを利用して、税務署では調査対象を選定しています。
これにより下記のようなときも調査の対象になりやすいことになります。
- そもそも申告書の記載自体が間違っている(意外に多いそうです)
- 売上高・仕入高・外注費が大幅に増えたり減った
- 大幅な黒字に(赤字)になり、納税が急増(急減)した
- 在庫の金額が急に増えたり減った
- 交際費などの経費が急に増えた
- 不動産の売却があり、多額の売却損益を計上した
- 役員の退職があり、多額の退職金を計上した
税務署へのタレコミ情報も!?
その他に、数字以外の要素なども加味されるといわれています。
- 信頼性の高い密告などのタレコミ情報が税務署にあった
- 相続や贈与など個人資産に大きな変動があった
- 無申告だったので、まとめて過去数年分の申告書を提出した
- 個人事業から法人に組織変更した
事業規模によっても大きく違う
事業規模によっても、税務調査の頻度は変わります。
売上が「100万円の会社」「1億円の会社」「100億円の会社」では、当たり前ですが 「100億円の会社」が頻度は高く、おおよそ3年~5年に1度のペースで税務調査があります。
売上が大きい会社は、税務署としても調査しなければならないと考えているようです。
業種や業態によっても!
営んでいる業種や業態によっても税務調査の頻度は変わります。
特に申告漏れが行われていた確率の高い業種は、当然ですが税務調査の対象になりやすい「重点業種」となります。
最新の国税庁の統計によると、下記の表に記載されているものがありますが、その他にも「パチンコ業・産業廃棄物処理業・飲食店・不動産業など」も、調査が多い業種です。
順位 | 業種目 | 申告漏れ所得金額 (1件当たり:万円) | 追徴税額 (1件当たり:万円) | 申告漏れ割合 | 前年の順位 |
1 | 風俗業 | 2,083 | 519 | 81.0% | 2 |
2 | キャバレー | 1,667 | 318 | 93.9% | 1 |
3 | プログラマー | 1,178 | 175 | 54.0% | 11 |
4 | 畜産農業(肉用牛) | 1,150 | 179 | 43.2% | 3 |
5 | 防水工事 | 1,109 | 191 | 45.6% | 15 |
6 | ダンプ運送 | 1,097 | 132 | 63.8% | 4 |
7 | 型枠工事 | 1,015 | 160 | 48.9% | 7 |
8 | 特定貨物自動車運送 | 1,007 | 129 | 56.5% | 5 |
9 | 解体工事 | 998 | 144 | 54.9% | 6 |
10 | とび工事 | 972 | 145 | 51.9% | – |
(国税庁HPより:2017年発表)
会社の本店所在地も!?
会社の本店所在地を所轄する税務署が、原則として税務調査を行います。
税務署は、道府県によってその数は大きく違います。
東京都には48の税務署がありますが、鳥取県には3つしかありません。
また、東京都の中も、税務署がない市町村もありますが、世田谷区のように区内に3つも税務署があるところもあります。
人口などが多い地域には税務署が多くあるわけですが、法人の数によって均等に税務署があるわけではありません。
(税務署ごとに調査官の人員も違います)
これにより、税務署ごとに管轄する法人の数が違いますので、会社が所在する場所によって、調査頻度はかわるのは当然のことです。
「離島にある会社」と「東京の世田谷区にある会社」の調査頻度はかなり違うのは当然です。
一昔前のことですが、とある元税務署員である税理士先生が『税務調査を受けたくなければ法人の本店は新宿区がいい!』と言っていたのを聞いたことがあります。
(決して「脱税するのは新宿で!」という意味ではありません。「キチンと申告」しているのに調査を受けたくないケースを統計的におっしゃったものです。)
結論としては、税務調査の地域格差は、確かに存在します。
税理士がついていないと税務調査が多いの?
税理士に依頼せずに、自分自身で申告書を作成して税務署に提出している人は、税務署の調査が多いという説もありますが、はっきりしていません。
ただし、申告漏れが成績評価となる税務調査官の立場からすると、調査しようと選定している同規模の法人の2社うち、時間の関係でどうしても1社のみ調査をしなければならないときには、そのうち1社は「税理士印が無い申告書」だとすると、心情的にそちらを選びたくなるのはよくあることのようです。
この記事は、執筆日現在の法令などに基づくものであり、その後の法改正によるアップデートは原則としてしておりません。
数日前の日経新聞の記事によれば、国税庁は、平成30年度の予算概算要求額と定員・機構要求をとりまとめ公表したそうです。
その中で「1,105人の増員要求」を行っているとのことでした。
数年前に、配置転換などで税務調査の要員を大幅に増やすといったニュースがありましたが、その結果もあり、税務調査は毎年3%以上も、着実に増え続けているようです。
投稿者プロフィール
- 盛永崇也(東京の神田で開業している税理士/行政書士事務所の代表)
「税務相談/税務顧問や経理経営支援/法人申告・確定申告・給付金申請・相続手続の代行/法人設立や廃業支援や代行」など、法人個人を問わず、お金にまつわる様々なサポートをさせて頂いております。